年を重ねた父と母の写真を撮った日
以前、ネットニュースで
「遺影写真専門のカメラマン」という記事を読みました。
そのときは正直、
「こんな職業もあるんだな」
それくらいの感想でした。
けれど今は、その仕事をとても素敵だと思っています。
大人になると、写真を撮る側になることは増えても、
自分が撮られるのは、なんとなく気が進まなくなるものかもしれません。
でも、ずっと飾られる一枚があるとしたら。
それは、どんな表情がいいのでしょうか。
私は、子どもの成人式の日に、
年を重ねた父と母の写真も撮ってもらいました。
この年代になると、
写真を撮る機会はぐっと減ります。
自分から「撮ってほしい」と言うことも、ほとんどありません。
けれど、あの日の一枚は、
いま、わが家にとってかけがえのない写真になっています。
横顔で残した、穏やかな一枚
父は少し照れたような顔をしていました。
着物なんて着なくてもいい、と最初は言っていたのに、
いざ袖を通すと、どこか誇らしげにも見えました。
そのとき、カメラマンさんが提案してくれたのは、
父と母、それぞれの横顔の写真でした。
父は左側へ。
母は右側へ。
正面ではなく、少しだけ視線を外したその姿は、
並べて見たとき、まるでお互いを見つめているようで。
とても穏やかで、あたたかい一枚になりました。
写真は、元気なうちに
父の写真は、いま仏壇に飾られています。
自然で、そっと微笑んでいる表情です。
母はまだ健在なので、
写真は飾らずに、大切にしまってあります。
けれど、あのとき撮っておいてよかったと、心から思っています。
年を重ねた父と母の姿は、
当たり前のようでいて、決して当たり前ではないのだと、
あの写真を見るたびに感じます。
ずっと飾られる写真だから
最後にずっと飾られる写真は、
その人がどんなふうに生きてきたのかを、
静かに映しているものであってほしい。
だからこそ、
元気なうちの、自然な笑顔を。
もし機会があれば、
高齢になった父や母の写真を、
そっと残してみてほしいと思うのです。


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